「ミス・パイロット」の見どころを航空業界の裏側から徹底解説!

ミス・パイロット ― 第1話(放送)の解説

注意!!
以下の内容は、第1話のネタバレを含んでいます。
第1話の内容を知りたくない人は、第1話(予告STORY)第1話(予告動画)だけ読むことをおすすめします。
こちらは、予告編に関する内容しか書いてないので、読んでからドラマを見て楽しむことができると思います。

ミス・パイロット

主人公の晴(堀北真希)は蒲田の居酒屋の娘だ。就職活動に連戦連敗し、ダメ元でANAの就職説明会に行く。篠崎機長(岩城滉一)に無理やり壇上に立たされた国木田機長(斉藤工)は、適当に終わらせようとする。

国木田「パイロットに必要なものは情熱と健康第一」

なんだかおざなりに言った感じだが、情熱と健康第一が必要なのは事実で、パイロットの適性を端的に表現した言葉だ。

なお、途中で同じく説明会に来ていた岸井(間宮祥太朗)の携帯が鳴ってしまうが、この着信音は木村拓哉がパイロット役を演じた「グッドラック(2003年)」のテーマソングだ。

ミス・パイロット

面接を突破した晴は、適性検査でシミュレーターを操縦する。ここで篠崎がやってきて、後ろから晴に話しかける。晴は篠崎の問いにすらすらと答え、計算まで正確に返す。このシーンは序盤の伏線と絡んで、パイロットの適性としてとても重要な要素を描き出している。それが何か分かるだろうか?

晴は居酒屋の娘で勘定の計算に慣れており、計算が得意だとパイロットに向いている!…ということではない。

序盤の伏線とは、篠崎のセリフだ。

「どんな人間がパイロットに向いているんだろうな」

一般には、パイロットとは「飛行機を操縦する仕事」だと思っている人が多いだろう。もちろん、操縦桿を押したり引いたりして機体を正確にコントロールできることは、パイロットとても重要な技量だ。しかし、パイロットは操縦しながら、管制官と交信したり、少し先の飛行状況の予測と計画を立てたり、機器類のチェックを行ったり、様々なものを同時にやらなくてはならないのではある。

つまり、篠崎が操縦中の晴に話しかけたのは、ただ陽気でいい加減なおっちゃんが試験に茶々を入れにきた訳ではなく、こういった複数のものを同時に行える能力があるかどうかをチェックしていたのだ。大切なのは、晴が計算が得意だったこと自体ではなく、操縦にかなりの注意力を向けている状態で計算ができたことなのである。

晴はシミュレーターの世界の中でフライトを仮想体験し、感動して思わず涙を流してしまう。採用されれば何でもよかった晴が、パイロットになりたいと強く思った瞬間だ。

ミス・パイロット

選考の合否通知を受け取った晴は、どうせ今回も不合格だろうと思ってシュレッダーにかけようとしてしまう。倍率は100倍と言われている試験だ。序盤では晴のように記念受験的に受ける人も多い。

しかし、選考が進むにつれて、合否通知を開ける晴の表情は真剣なものとなっていく。将来やりたいことがなかった学生が、やりたいことの形が見えてきたのだ。ここまで来たら、絶対にパイロットになりたい。最初は記念受験でも、後半はそういった心理に変わる受験生も多いのではないだろうか。

ミス・パイロット

ミス・パイロット 選考が進み、次はグループでできるだけ遠くまで飛ぶ紙飛行機を作ることとなる。この試験で試験官が見ているのは、飛距離だろうか?飛距離だけを見るなら、受験者をグループに分ける必要はない。これは、航空機メーカーの物理学の試験ではないのである。

ここで試験官が見ていたものは、各受験生がどういう性格なのかだ。晴は紙飛行機の折り方を忘れているレベルだが、「周りの人が放っておけない」という能力を発揮する。そして、教えてもらったことを素直に受け止める。この性格は特にパイロットの初等訓練において、非常に有利なものだ。

パイロットの訓練では、どう頑張っても自力では得られない要素もあり、教官から教わることを吸収することは大切だ。また、限られた訓練時間では、全ての失敗を経験することはできず、他の候補生の失敗を聞いてそこから学ぶことも重要だ。晴の素直な性格は、訓練において非常にプラスのものとなるだろう。

また、同じグループとなった山田一男(藤井流星)や小鳥翔(小柳友)が見せた、他者対して協力的な姿勢も重要な要素である。諸星麻也(庄野崎謙)も当初は非協力的な姿勢を見せるが、晴が困っているのを見て思わず手を貸してしまう。訓練では候補生同士が協力して取り組まなくてはいけないことが多く、この性格もまた訓練にはプラスとなるだろう。

一方、千里(相武紗希)は強力なリーダーシップと協調性を発揮してグループを率い、圧倒的な飛距離を叩き出す。だが、試験が終わった後、千里は「あれはリーダーシップや協調性を見る試験だ」と言う。恐らく、これは千里の本来の性格というよりは、試験官受けするように演じたのであろう。千里が人間的な面で今後どう変わっていくのかも、今後の見どころの一つである。

ミス・パイロット

千里に中途半端な気持ちでパイロットを目指すな、と指摘され、晴はパイロットを諦めかけてしまう。しかし、晴にとって、パイロットはもはや夢となっていた。晴はANAから内定がまだ出ていないにも関わらず、宮田製作所からせっかくもらった内定を断りに行く。

宮田製作所の社長(鶴見辰吾)は「小さな工場だから来てくれただけで採用」などと言いつつ、晴の「人に素直に教えを請える」能力を見極めていた。晴が内定を断ったことを残念がる。

なお、宮田製作所は航空機の部品を製造している会社だ。世界の主要なエアラインが使っている大型機はアメリカのボーイング社とヨーロッパのエアバス社の大企業2社が独占している。しかし、この大企業に部品を供給して航空産業を支えているのは、こういった日本の中小企業なのである。

宮田は、この工場も同じ航空産業だ、と言って、内定を断った晴を元気づけて最終面接に送り出す。

ミス・パイロット

最後のシーンでは、晴を含む内定者がANAの格納庫で整備中の飛行機を見学する。この格納庫は羽田にあるANAの実物の格納庫で、すぐ脇が滑走路となっている。晴たちは滑走路から轟音を立てて飛び上がるANA機に気づき、格納庫の外に飛び出る。

晴たちにとっては飛行機というのは乗客として乗るものだった。まだ内定をもらったばかりで訓練すら始まっていないが、適性検査でシミュレーターの操縦を体験した晴たちにとっては、飛行機とは乗るものから動かすものへとなった。そのダイナミックさを味わってしまった晴たちの目には、飛び立つ飛行機がこれまでとは違ったものに見えたことだろう。

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関連項目

ミス・パイロット ― 第2話(次回予告)の解説

羽田空港内のANAの格納庫の写真
パイロット入試問題集 2010-2011

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