「ミス・パイロット」の見どころを航空業界の裏側から徹底解説!

ミス・パイロット ― 第一話(予告)の解説

東京・蒲田にある居酒屋の娘、手塚晴(堀北真希)は、就職活動中の大学生。特に夢もなく、就職活動に苦戦し万策尽きた晴の目に飛び込んできたのは、ANAの自社養成パイロットの募集要項だった。

晴は考えもしなかった航空業界の会社説明会で、長年パイロットを夢見てきた小田千里(相武紗季)と出会う。100倍以上の倍率にもかかわらず、パイロット一本で勝負をする東大大学院エリート才女の千里とは正反対の晴だが、採用試験が進むにつれて二人は会話を交わす仲になる。


ミス・パイロット 晴は特にやりたい仕事もない大学生だ。むしろはっきりやりたい仕事があるよりも、漠然と就職活動をやっている晴のような大学生の方が多いのではないだろうか。一方、千里は東大大学院の超エリートである。

いくら東大で頭がよく、ペーパーテストが強くて面接の受け答えが完璧にできたとしても、パイロットの採用試験にはそれ以外の項目がある。特に、適性検査と身体検査は努力のしようがなく、日常生活に全く問題がなく健康とされていても不可とされる場合もあるので、運の要素が大きい。

ゆえに、いくら自信があったとしても、千里のように女性パイロット(ミス・パイロット)一本で就職活動をするのは無謀としか言いようがない。また、常に取り得る選択肢を複数準備しておき、一つの方法が失敗してもバックアップの体制が取れるようにするのがパイロットの仕事、というところからも、千里のスタンスはパイロットからは異なるものである。一見完璧な千里も、晴と同じくパイロットとして成長していくところが描かれるのだろうか。

なお、パイロットの採用試験は例年、一般企業よりも早い段階から何回かに分けて始まるので、先に内定をもらってしまった人は他の会社を受けないまま航空会社に就職する人も実際にいる。

ミス・パイロット

晴はパイロット採用試験を受ける傍ら、さまざまな会社にエントリーするも、手にするのは不合格通知ばかり。

一方で、そんな晴の天真爛漫、素直な性格がANAパイロットの採用試験面接官の国木田孝之助(斎藤工)と、現役機長でパイロットを束ねる総責任者・篠崎一豊(岩城滉一)の目にとまる。


パイロット候補者に求められる素養とはなんだろうか。素直な性格であるというのはパイロットにとって大切な要素だ。パイロットの訓練とは、特に最初の方は教わったことをそのままできることが求められる。

一般的な企業では、言われたことをそのままやっているようではだめ、自分で考えて、ということをよく言うが、パイロットの初等訓練にはそれはあまり当てはまらない。なぜなら、航空事故とは何百万回に1回という低確率で発生するものであり、それをさらに下げようとするのがパイロットの仕事だからだ。この個人の想像を超える非常に低確率な事象を扱うために、過去の事故事例や統計的な手法を元に各操作手順が設定されている。そのため、設定された手順を自分の考えで独自に変えることは、非常に危険とされる。

よって、決められたこと、教官から教わったことを、そのまま実行できる素直な性格である、というのはパイロット候補生にとって、とても大切なことである。なお、言われたとおりにやればよい、というと一見容易に聞こえるが、操作手順は複雑で、各規定等を全て満たした操作をすることは、意外と難しいものである。

国木田と篠崎が、この晴の素晴らしい性格をどのように感じ取るのか、そしてその性格がパイロット候補生にとってどういう意味を持つのか、をどのように視聴者に向けて表現できるか、が第一話の見どころの一つとなるだろう。

ミス・パイロット

順調に選考を突破していく晴だったが、ここぞという所でしくじってしまう。追い打ちをかけるように千里から、何百人の命を預かるパイロットという職業に対する気持ちの甘さを指摘された晴はすっかり自信を無くす。そんな折、晴は小さな製作所から内定をもらい・・・。

何百人の命を預かるという感覚は、普通の大学生には中々実感の湧かないところだろう。訓練を受け、過去の事故事例などを学んでいくうちに、徐々にパイロットとしての責任感が醸成されていくものだ。そんな中で、まだ女性パイロット(ミス・パイロット)として仕事したことがないのに、それを指摘する千里は大したものである。

さて、晴のような普通の大学生と、千里のような有名大卒の大学生、実際に採用されやすいのはどちらだろうか。通常の就職活動のルートから採用される学生で、早慶などの有名大卒の方が採用者に多いように思う。

パイロットの仕事に学力というのはあまり関係がないし、文理の区別もない。実際の採用選考プロセスは非公開だが、有名大の方が序盤の英語を含む学力テストで振い落されにくく、面接等での受け答えも要領よくできる学生が多いという要素はあるのだろう。身体検査や適性検査では大学名は全く関係がないようである。

なお、千里のように大学院で学んだことが特にパイロットの仕事に役に立つということはなく、年齢が上がる(=会社がかける訓練費は同じだが、働ける年数が減る)だけ不利になるような気もするが、特に採用で有利不利はないようである。

おまけ‐パイロットを諦めて、内定をもらった小さな製作所に就職したら、「三丁目の夕日」そのまんまだね。

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